アルミニウム合金の種類


アルミニウムのうち、純度99%以上のものを純アルミニウムと呼び、また種々の元素を添加して強度を高めるなどの性質を改善したものをアルミニウム合金と呼んでいます。

アルミニウム合金は、最終製品の用途に必要な性質によって、板、泊(はく)、形材、管、棒、線および鍛造品に加工する展伸材用合金と、鋳物やダイキャストなどの鋳造用合金に大別され、それぞれ非熱処理型合金と熱処理型合金として分類できます。
・非熱処理型合金は、圧延加工など主に冷間加工で、強度を得る合金 です。
・熱処理型合金は、焼入れや焼戻しなどの熱処理で、所定の強度を得る合金です。

鋳造用合金
鋳造用アルミニウム合金は、各種鋳造法を利用して鋳物をつくるための合金であるが、適用する鋳造法によって要求特性が異なるので規格では鋳造法別に分類規定されています。
鋳造用アルミニウム合金には、砂型・金型鋳物用合金とダイキャスト用合金の二つの系統があります。

砂型および金型鋳物用合金
後述のダイキャストとは異なり、鋳型に溶湯(溶解したアルミニウム)を鋳込む際に特別な圧力を加えないため、重力鋳造法と呼ばれています。
合金の種類によって鋳造性、強度、耐摩耗性、高温強さなどの特性が異なるため、その特性を活かす限られた用途に使用されています。

Al – Cu – Mg 系合金(AC1B)
鋳造用アルミニウム合金の中で強靱性にすぐれた合金であり、切削性がよく、電気伝導性にすぐれています。
架線用導電部品、自転車用部品、航空機用油圧部品等に使用されています。
しかし、耐食性が劣るため腐食環境での使用は適していません。
Al – Cu – Si 系合金(AC2A・AC2B)
前記の合金よりも銅の添加量を減らして、強靱性を若干犠牲にしてケイ素を添加することによって鋳造性の改善を図った合金であり、自動車用エンジン部品など使用量も多いです。
一般鋳造製品用としてとして優れています。
Al – Si 系合金(AC3A)
この合金は、ケイ素だけを合金元素として添加したもので、鋳造性に優れています。
強度は高くないが伸びは大きく、熱膨張係数が小さく、耐食性もよい。したがって、強度はあまり必要とせず、薄肉で複雑な形状や模様を呈する門扉やカーテンウォールなどに適しています。
Al – Si – Mg 系合金(AC4A・AC4C・AC4CH)
この合金系は前記のAl -Si 素系合金のケイ素の量を減らして、マグネシウムを少量加えた合金です。すぐれた鋳造性を維持したまま機械的性質を改善した合金です。
主な用途は、エンジン部品、車両部品、船舶用部品などがあげられます。AC4CH合金はAC4C合金の強靱性の向上を意図して不純物の含有を厳しく規制したものであり、自動車用ホイールなど保安的要求が高い部品に多く使用されています。
Al – Si – Cu 系合金(AC4B)
この合金系は、Al-Si素系合金のケイ素量を減らして、銅を添加した合金であり、耐食性は銅を含有するため劣りますが、鋳造性にすぐれ強度も高いので、自動車用、電気機器用、産業機械用部品など広い分野で利用されています。引っ張り強さは高くないが伸びは少なく、一般用として広く用いられています。
Al – Si – Cu – Mg 系合金(AC4D)
この合金系は、前記のAl-Si-Mg系AC4C合金のケイ素量を若干低くして、銅を添加した合金です。
鋳造性としての引け特性に優れているため耐圧性、耐熱性があり、シリンダーブロックやクランクケースなどエンジン部品や油圧機器部品に使用されています。
Al – Cu – Ni – Mg 系合金(AC5A)
この合金は、高温での使用でも硬さを保持させようと改善した合金であり、耐食性は劣るが切削性や耐摩耗性にすぐれています。
従来はエンジン用部品として使用されていたが衰退の一途をたどり、現在は、切削性と耐摩耗性に注目され、ビデオレコーダのドラムなど精密加工を要する摺動部品などに使用されています。
Al – Mg 系合金(AC7A)
この合金系は、代表的な耐食性合金で強さも伸びも高く、切削性にすぐれています。合金の化学組成から熱処理によって強度を向上させることができない。また、溶湯は酸化やガスを吸収しやすいため鋳造性が悪い欠点がある。
主な用途は、架線金具、船舶用品、建築金具、事務機器部品などに用いられています。
Al – Si- Ni – Cu – Mg 系合金(AC8A・AC8B・AC8C)
この合金系は、Al-Cu-Ni-Mg系(AC5A)合金を用いたピストンとしての不十分な特性を改善するため、銅の量を半減させケイ素の添加量を大幅に増やして熱膨張係数を小さくし、耐摩耗性を高めた剛性の高い合金です。
Al – Si – Cu – Mg – Ni 系合金(AC9A・AC9B)
この合金系は、ケイ素の量が最も多く、AC9A合金は23%のケイ素、AC9B合金では19%のケイ素を含有しています。
前記のAL-Si-Ni-Cu-Mg系合金よりもさらに熱膨張係数が小さくした合金であり、高い剛性と耐摩耗性があることから2サイクルエンジン用ピストンやディーゼルエンジン用ピストンなどに使用されています。

ダイキャスト用合金
ダイキャスト用アルミニウム合金は、加圧力を作用させて金型に高速で溶湯(溶解したアルミニウム)を注入させるのに都合のよいものが選ばれています。複雑な形状の部品をネットシェイプにつくるため、溶湯には高い流動性が求められ、また、金型への焼付きを予防するため、砂型・金型用合金では不純物とされる少量のFe(鉄)を故意に添加しています。
なお、ダイキャストは溶湯を高速で金型内へ射出注入するため空気を巻き込みやすく、つくられた鋳物に高温加熱を行うと巻込まれた空気が膨張してブリスターと呼ばれる内部欠陥を発生するため、通常は熱処理をしないで使用されています。
ダイキャスト用金型は冷却早く、速い冷却速度で成形(急冷凝固)されることによって微細な組織が得られ、高い機械的性質の製品をつくることができます。
また、急冷凝固は機械的性質に及ぼす不純物の影響を受け難くしているので、多くの再生地金が使用されています。

Al – Si 系合金(ADC1)
この合金は、前述の砂型・金型用のAC3Aと同じような組成の合金であり、鋳造性と耐食性がよい特性から高い強度を要求しない薄肉・複雑形状の鋳物に適しており、自動車メインフレームや自動製パン器内釜などの適用例があるが使用率は少ない。
Al – Si – Mg 系合金(ADC3)
この合金は、砂型・金型用のAC4Aと同類の合金であり、機械的性質と耐食性がよいため自動車や自転車用部品として使用されることがあるが、使用率は少ない。
Al – Si – Cu 系合金(ADC10・ADC10Z・ADC12・ADC12Z)
この合金系は、砂型・金型用のAC4Bに相当する合金で多量のケイ素の添加で鋳造性を改善し、銅の添加で強度を高めた合金であり、ダイキャスト用合金の中で特性を総合して見た場合、鋳造性に優れた高力合金として位置づけられており、その用途は広く、使用量も多い。
特に自動車エンジン部品や電気機器部品におけるシェアが高い。
合金記号の末尾にZを付けた合金は、海外規格との整合化のために1992年のJIS規格改正時に採用されたものであり、不純物としてZn(亜鉛)を3%まで許容したものです。
Al – Si – Cu – Mg 系合金(ADC14)
この合金系は、当初はエンジンブロックの軽量化を目的として開発されたもので、強度、耐摩耗性にすぐれ熱膨張係数が小さいのが特徴である。
自動変速機用オイルポンプボディやハウジングクラッチなどに使用されています。

展伸材用合金
展伸材用合金は、圧延加工や押出し加工によって、板、はく、形材、管、棒などのいろいろな形状に加工される合金で、鍛造品もこれに含まれます。
アルミニウム合金のおもな性質は、添加元素の種類と添加量によって影響されます。これらは次のような合金系に区分され、合金系ごとに類似した性質をもちます。したがって、材料の選択に当たっては、使用目的に応じて最適な性質をもつ合金を選ぶことが必要です。
アルミニウム展伸材用合金番号(記号)の読み方

純アルミニウム(1000系アルミニウム)
1000番台の表示は工業用純アルミニウムを示し、1100、1200が代表的です。いずれも純度99%以上の純アルミニウム系の材料です。
ただし、1100だけはアルマイトとして知られている陽極酸化処理後の光沢をよくするために微量のCuが添加されています。
1050、1070、1085の下二桁の数字はアルミニウムの純度を表し、それぞれ純度99.50、99.70、99.85% 以上の純アルミニウム材料であることを示します。
この系の材料は加工性、耐食性、溶接性および電気や熱の伝導性にすぐれており、家庭用品、日用品、電気器具、送配電用材料、放熱材などに多く使用されています。
しかし、強度が低いため構造材としては適していません。
Al – Cu – Mg 系合金(2000系アルミニウム合金)
ジュラルミン、超ジュラルミンの名称で知られる2017、2024合金が代表的なもので、鋼材に匹敵する強度があり、構造用材や鍛造材として使用されています。
しかし、比較的多くのCuを添加しているため耐食性に劣り、厳しい腐食環境にさらされる場合には十分な防食処理を必要とします。
航空機用材料として表面に耐食性の良い純アルミニウムの板を重ね合わせて圧延加工した合せ板として使用されることもあります。
Al – Mn 系合金(3000系アルミニウム合金)
代表的なものは3003合金で、Mnの添加によって純アルミニウムの加工性、耐食性を低下させることなく、強度を少し増加させたものです。
器物、建材、容器などに広い用途があります。
3003に相当する合金にマグネシウムを1%程度添加した3004、3104合金は、さらに強度を高めることができるので、カラーアルミ、屋根板、アルミ缶などに多く使用されています。
Al – Si 系合金(4000系アルミニウム合金)
この合金系は、比較的多くのケイ素を添加した合金で溶融温度が低いため、主としてブレージングろう材、溶接ワイヤーとして使用されています。
また、熱膨張係数が低く、耐熱性、耐摩耗性にすぐれており、鍛造ピストン材料とし用いられている4032合金もあります。
Al – Mg 系合金(5000系アルミニウム合金)
この合金系は耐食性や溶接性が良いことから比較的種類が多く、広い用途があります。5N01や5005合金のようにマグネシウム添加量の少ないものは、装飾用材、建材、器物用材に、5052合金のように中程度のマグネシウム添加量のものは強度も中程度であり、添加量の多いものは缶蓋材や船舶、車両、化学プラントなどの構造用材として多用されています。
Al – Mg – Si 系合金(6000系アルミニウム合金)
この合金系は、強度、耐食性とも良好で構造用材として多用されています。アルミサッシに多量に使用されている6063合金および鉄道車両、自動車部材、陸上構造、船舶などに使用されている6N01合金は、押出し加工性にすぐれ複雑な断面形状の形材が得られます。
また、少量の銅を添加して構造用鋼材に相当する耐力を有する6061合金など多くの種類があります。
Al – Zn – Mg 系合金(7000系アルミニウム合金)
この合金系は、銅を含まない溶接構造用合金と銅を添加したアルミニウム合金のなかで最も高い強度をもつ合金とに分類できます。
Al-Zn-Mg-Cu 系合金の代表的なものは、日本で開発された超々ジュラルミンの呼称で知られる7075合金で、航空機、スポーツ用品類に使用されています。
Cuを含まないAl-Zn-Mg 系合金の代表的なものに、7N01、7003合金があります。比較的高い強度があり、しかも溶接部の強度は常温に放置するだけで母材に近い強度まで回復するため溶接構造用材料として鉄道車両、陸上構造物などに使用されています。
8000系合金(その他の合金)
これまでの合金系に属さないその他の材料で、急冷凝固粉末冶金合金や低密度・高剛性材として開発された Al-Li(リチウム)系合金などがあります。
日本では、Fe(鉄)を添加することによって強度と圧延加工性を付与したアルミ箔用合金8021、8079が、電気通信用や包装用として使用されています。

アルミニウム展伸材用合金番号(記号)の読み方


参考:元素記号
Al = アルミニウム・Cu = 銅・Mg = マグネシウム・Ni = ニッケル・Si = ケイ素・Zn = 亜鉛

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